HUMAN SUSTAINABILITY PROJECT

研究課題

 私たちはヒューマン・サステイナビリティ・プロジェクトを推進するにあたり、中心となる課題を据えました。

1. 人間の統合的理解

 より良い細胞はどのような状態にあるかを求める「動的細胞生命科学」、人間のどのような行動が人間の細胞をより健康にするかを追求する「動的人間生命科学」、さらに精神的活性、つまりやる気や達成感を起こさせるかの研究「身心一体学」を通して、ヒト=人間の「こころ」と「からだ」の"Wellness"を達成するための実践的な研究です。


2. 生活の質向上基盤研究

 「東洋の身のこなし」で必ず意識される「丹田」について、様々な分野の経験者による意見交換の場として「丹田研究会」を定期的に開催している。ここでの議論をきっかけに「身心一体学寄付講座」で科学的に検証し、再び研究会で議論する。さらに「安蘇予防療法学術委員会」「脳神経疾患研究所総合南東北病院」との共同研究の枠組みで、生活習慣病やアルツハイマー病を予防し、日常生活の質を高めるための「丹田活用法」を編み出します。


3. 人間活性化住環境

 「身心一体学」での知見をもとに、生き生きとした生活を送るための具体的な住環境整備を検討、実装へとつなげます。


4. 新しい健康パラダイムによる産業創成

 「身心一体学」での成果を多くの人々に享受していただくための、産官学連携の枠組み。絵に描いた餅ではなく、実際に財・サービスが流れるビジネスモデルを構築いたします。


5. 在宅高齢者生活支援・在宅介護支援

 人生の最終ステージをいかに幸福に過ごすかは、身体の機能維持、特に自律的排泄能力の維持に大きくかかっています。健康なまま長寿を過ごすための実践的「身体活用法」を案出し、普及をはかります。


6. 教養教育・科学リテラシー

 「身心一体学」の基本「自然物としてのヒト」「人工物としての意思を持った私」。その二面性の自覚を通し「己を知る」ことは、人文科学的な哲学であると同時に、自然科学のリテラシーを高めるきっかけとして、大変に有効な事例です。汎文化的・グローバルなコミュニケーションのために、「身心一体学」の成果を文理を超えた市民としての教養基盤の再構築に反映させます。

 この教養基盤こそ、地球社会の持続のための人々の行動変容のきっかけになるのです。



プロジェクト・リーダー

跡見順子 ATOMI Yoriko, Ph. D

 東京大学名誉教授、東京大学アイソトープ総合センター特任研究員。人間の身体は、自然の法則に基づきダイナミックに活動する生命システムであるとともに、意識や意欲により変化させることができる存在として、環境における生命の可塑性を積極的に活用した身体システムの活性化戦略を提案している。

 お茶の水女子大学卒、東京大学大学院教育学研究科で運動生理学研究で学位取得後、同大教養学部助手、助教授を経て、東京大学大学院総合文化研究科教授。東京大学医学部薬理学教室、国立精神神経センター、米カリフォルニア大学バークレー校、ノースウェスタン大学の客員研究員等を歴任し、生化学、細胞分子生物学の研究方法も取得し、個体の運動と細胞活動の両方のスケールから、人間の生命について研究を進めている。

 2007年4月より2年間、東京大学のフラッグシッププロジェクト「サステイナビリティ学連携研究機構」に特任研究員として招かれた。



メンバー

跡見順子 ATOMI Yoriko, Ph. D.
東京大学名誉教授
東京大学アイソトープ総合センター特任研究員

藤田恵理 FUJITA Eri, Ph. D.
東京大学情報理工学系研究科特任研究員 細胞生物学

桜井隆史 SAKURAI Takashi, Ph. D.
東京大学大学院助教 運動生理学

小山由朗 KOYAMA Yoshiro
プロダクトデザイナー

跡見友章 ATOMI Tomoaki
理学療法士

山口耕平 YAMAGUCHI Kohei
理学療法士



「身心一体科学」寄附講座


  「細胞」の科学から「からだ」の科学、さらに「こころ」の科学まで


 知の爆発といわれる、現代科学の急速な成長が始まって100年。科学と技術の進歩の恩恵を受け、われわれは幸福な生活を享受している。ヒトの寿命は延びかつてない高齢長寿の喜びを存分に味わっているはずだが、実際われわれの前には、悲惨な現実が横たわっている。

 人類に幸福のために、身体負荷を軽減し、余力を各個々人の自己実現に当てられるように、様々な知識を活用してきた。しかし、智恵を絞って作った余暇を目の前に、幸せな余暇を楽しめる健康なからだを失ってはいまいか?

 私たちの「身体一体学」では、人間が人間であり続けるための知識を糾合し、人生最後まで人間らしく生き抜く知恵の体系化に挑みます。


講座の研究課題


 近現代の科学技術発達の過程において、分離されて扱われてきた人間の二つの側面、「身体」と「精神」を再び統合的にとらえ、全ての人々が"よき生活"を送るための知識基盤を構築します。


1. 動的細胞生命科学


 細胞の"Wellness"、より良い細胞はどのような状態にあるか、についての研究。

 細胞外環境との動的相互作用による細胞活性度に関する知識の深掘りと既知の知識群の構造化。

・現在未検証の分化細胞のダイナミック・インスタビリティの研究。

・細胞への物理的・機械的刺激と応答、活性化の研究

・活性化された細胞の環境への適応、エピジェネティックス研究


2. 動的人間生命科学


 人間のどのような行動が人間の細胞をより健康にするか、についての研究。

 ヒト・スケールの身体運動が細胞活性に影響を及ぼすプロセスの探求。意識的な活動で身体の至適状態を維持・向上させる知識群の構造化。

・人間の意識的行動による、マクロな全身の状態の変化の研究

・全身の運動が、細胞内外にどのような変化引き起こすかの研究

 以上の項目を、線維芽細胞、筋細胞、神経細胞、免疫細胞、脂肪細胞、血管内皮細胞などを対象に、ヒトあるいは動物実験で検証する。


3. 身心一体学の構築


 どのような身体技法が身体を活性化させ、さらに精神的活性、つまりやる気や達成感を起こさせるかの研究。すなわち、精神の"Wellness"を達成するための実践的身体活用法の開発。

・東洋の身体技法の研究

・精神状態表現の科学的記述と身体の物質プロセスとの比較

 仏教の「行」や武道の「構え」などにおける精神集中の術のような、身のこなし・振る舞いの作法には、身体を通した精神コントロールの大事なきっかけが隠されている。fMRI、NIRSのような最新の脳科学の手法、モーション・アナリシスなどの最新の測定技術を用い、精神活動の物質プロセスへの反映をつぶさに観測することで、精神科学と物質科学との橋渡しを可能とする。

 また、身体運動、精神活動の内観的認識の表出である、言語の整理により、分断された「からだ」と「こころ」の統合的理解の基盤を構築し、さらに内観によって記述された状態の科学的・客観的記述との比較。


講座開設への応援メッセージ


日々成長し、老化しているからだの変化を的確に把握し、健全な状態をより長く保持するために、身体運動やスポーツを実践する的確な方法を探究することを目指した、本寄附講座の実現を心から応援します。この寄付講座によって、既存のフィットネス・クラブ、スポーツ・クラブ、さらに各自治体が管理する運動施設に対して、より適切な指針を与えるものと信じます。


健康スポーツ科学・放送大学教授・東京大学名誉教授 


宮下充正

Atomi&Shimizu Lab. 2013