自発性研究会シンポジウム 2009年10月12日に開催しました 


「最先端の学術を、人間自身の心身のとらえ方、自己制御、行動指針の改善に活かせないか?」

 この思いを共にする研究者が文・理の垣根を越えた学際領域を立ち上げようとしています。自らの心身との付き合い方は個人の主体的判断に任されますが、その判断のための学術を集約する努力を始めようというのがこの学術領域の趣旨です。

 iPS 細胞や遺伝子による治療が人間の運命を書き換える期待を集めています。これと並行して、日常的な生活の中で自らの心身とどのように付き合っていくかという生活習慣にも強い関心が寄せられています。これは人類を今なお悩ませる多くの疾病が、遺伝的素因だけでなく生活習慣から発症してくるからです。ここに言う疾病は高血圧や糖尿病といったいわゆる生活習慣病ばかりでなく、感染症から薬物依存、ギャンブル・ゲーム中毒といった社会病理に根ざした現象までも含みます。刹那的満足に走るか、地道な努力を積み上げるかもまさに生活習慣の違いと言えるからです。

 そもそも生活習慣は生命体である人間自身の心身との付き合い方の問題です。文・哲・宗教学はこの心身との付き合い方に常に正面から向き合ってきました。社会・法・経済学はそうした人間たちが織りなす社会活動の中に人間自身を見てきました。自然科学は人間の心身能力を拡張する理知的道具を生成しながら、その拡張された能力が人類を破滅ではなく、繁栄に向かわせることを希求しています。なかでも生命理化学・脳科学・ロボット科学はヒト身体の生命科学的基盤・運動特性、脳の物質特性・稼働特性に注目しながら目覚ましい発展を遂げています。


 このように各学術領域が発展・成熟してきているのに、その成果を人間の心身のとらえ方に活かす道筋を真摯に開拓する組織的活動がいまだに本格始動していないことが一種の過飽和状態を作っていると捉えます。人間の心身のとらえ方を中心に据えた新しい学際領域が、この過飽和状態に蔵された学術エネルギーを結晶させる種になるはずです。
我が国は世阿弥以来、世界にまれにみる意識的身体文化を育んできた長寿国です。この日本から「最後まで人間らしく生きる」ための学際領域を立ち上げようではありませんか。

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 人間の身体・脳が生み出す限りなく豊かな行動・運動・社会の基本原理を語り合いましょう。

 ●会場:東京大学 山上会館(大会議室)
   〒113-0033 東京都文京区本郷 7-3-1 東京大学 本郷キャンパス内 山上会館